第8回「息切れと肺の病気」

名古屋市立東部医療センター 市民健康講座

息切れと肺の病気

開催日:平成17年4月27日(水曜日)
演者:第四内科部長 杉浦 芳樹

咳をする人のイラスト成人の息切れを来たす病気の中で、最近、COPD(慢性閉塞性肺疾患)が注目されています。COPD(慢性閉塞性肺疾患)は肺、気管支の構造変化を来たす結果、慢性の気流制限を来たし、息切れ、咳、痰といった症状を示す疾患ですが、COPDの患者数とその死亡数は急激に増加であり、WHOは2020年には全世界の死亡原因の3位になると予測されています。

また日本において最近おこなわれた疫学調査(NICE study)では40歳以上の有病率は8.5%であり、その患者数は530万人に上るとされています。このような重要な疾患であるにもかかわらず、COPD患者の多くは症状が極めてゆっくり進行するため病気として自覚せず、また疾患としての認知度も低いため医療機関を受診せずに診断されないまま十分な治療や教育が受けられていないのが現状です。

実際、NICE studyによってCOPDと診断された患者の中で医療機関にてCOPDと診断されていたのはわずかに10%でありました。COPDの主たる原因は喫煙であり、喫煙はCOPDのリスクの80%~90%を占めます。また喫煙開始年齢が若年であるほど進行しやすいです。

従って、その治療は禁煙が最も重要であり、COPD治療と予防の根幹を成しています。薬物治療としては抗コリン薬やβ2刺激薬の吸入療法が主体であり、インフルエンザワクチン接種も急性増悪の予防に有効で、すべての患者に薦められる治療法です。

さらに重症になると在宅酸素療法の適応となり、また一部の重症患者には手術(Volume Reduction Surgery)や在宅人工呼吸(NIPPV)がおこなわれる場合もあります。しかし、そのような重症患者を増加させないようにする事が急務であり、COPDは禁煙によってほぼ完全に予防しうる『肺の生活習慣病』であるという認識にたってをこの病気を未然に防ぐ事が最も重要なことと考えられます。

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